『今夏最高気温』


 

 

「む〜〜〜〜〜」

 

 

 

 

「う〜〜〜〜〜〜〜」

 

 

 

「ひまだの〜、裏葉」

「そうでございますね、神奈さま」

 

 

 

「暑いの〜、裏葉」

「そうでございますね、神奈さま」

 

 

 

「・・・なんでそんな早く返事ができるのだ?」

「そうでございますね、神奈さま」

 

 

 

「余をバカにしておるのか?」

「そうでございますね、神奈さま」

「なにを〜!余をバカにするでないぞ!!」

「そうでございますね、神奈さま」

 

 

「はぁ、もうよい、柳也どのを呼んでまいれ」

「そうでございますね、神奈さま」

 

 

 

 

「おい神奈、これはどういうことだ!?」

「おお柳也どの、実はひまなのでな、なにかよいひまつぶしを・・・」

「そういうことじゃない、裏葉になにがあったんだ!」

「う、裏葉か?」

「さっきから俺がなにを言っても『そうでございますね、神奈さま』としか言わないんだ」

「なんと!余のときもそうであったぞ」

「そうでございますね、神奈さま」

「ええい、裏葉はちとだまっておれ」

「そうでございますね、神奈さま」

「とにかく、裏葉がこうなった理由を調べなきゃな。ちょっとそこいらの者に聞いてくる」

「たのんだぞ、柳也どの」

「そうでございますね、神奈さま」

 

 

 

 

「おや衛門殿、まだ夜番にはお早い時間ですが」

「いや、交代しに来たんじゃない。女官の裏葉に最近変わったとこは無かったか?」

「裏葉・・・ですか?女官の中でもとても奇特な方だと・・・」

「まぁ確かに奇特だろうが・・・・・そいつになにかあったとか聞いてないか?」

「いえ、私はなんにも・・・」

「そうか、すまなかったな。仕事を続けてくれ」

 

 

 

 

「あら衛門さま、女官の詰め所へ何用でございましょうか?」

「いや、女官の裏葉に最近変わったとこがあったら教えてくれ」

「裏葉さまでしょうか?あのお方ははじめからかなりの変わり者でした故に、少々の変わりようではわたくしどもは気付かないかと」

「では、なにかあったとかそのような話は」

「聞いておりませぬが」

「そうか、すまなかった」

 

 

 

 

「もどったぞ」

「柳也どの、なにかわかったか?」

「いや、誰も知らないらしい。裏葉はもともとが変わり者だからな」

「そうでございますね、神奈さま」

「いいか裏葉、俺は神奈じゃない、柳也だ」

「そうでございますね、柳也さま」

「あ〜〜もう!!名前のとこが変わっただけじゃないか!」

「そうでございますね、神也さま」

「おお、混ざったぞ、柳也どの」

「感心してる場合か」

「そうでございますね、柳奈さま」

「裏葉・・・おまえわざとやってないか?」

「そうでございますね、神柳さま」

「しかも社殿全体をまわってかなり暑いし・・・柳也ちん、だぶるぴんち」

「なにを言っておるのだ?柳也どの」

「いや、暑さにやられた・・・・・っていうか裏葉ってさっきから全然汗かいてないな」

「余は汗をかいている裏葉など見たことがないぞ」

「そうか、そういうことか!謎は全て解けた!裏葉は暑さにやられたんだ!」

「それはどういうことなのだ?」

「人体というものはな、暑いときには汗をかいて体温を調節するんだ。だが、この暑さのなかで汗をかかない裏葉の体には熱がたまっていって・・・・・・」

「こうなった、というわけか」

「そうだ。そしてそうだとわかればあとはたやすい。裏葉、走るぞ!走って汗をかくんだ!」

「そうでございますね、龍野さま」

「文字の変換まで狂い始めたな。いそがなければ!いくぞ、裏葉!」

 

 

 

 

 

 

「・・・で、結果はどうであったか?」

「見ての通りだ。全く汗ひとつかかん」

「そ・・・うでご・・ざ・・・・」

「むしろ悪化した気がするのは余だけか?」

「心配するな、俺もだ」

「・・・・います・・」

「こうなったら、汗をかかせずに体温を下げるしかないな。裏葉、氷室へいくぞ」

「なに、氷室とな?余もいくぞ」

「かまわないが勝手にたくわえを食うなよ」

「そんなことわかっておる。ささ、早くいくぞ」

「ね・・・か、鉋・・・さま」

 

 

 

 

「というわけで、この中へ入れてほしい」

「しかし衛門殿、氷室開きにはまだ・・・」

「たくわえを使うわけではない。暑さにやられた者がいるので中で休ませるだけでいい」

「わかりました。その代わり見張りとして私も同行させていただきます」

「よし、きまりだ」

 

 

「ふぃ〜やはりここは快適であるな」

「極楽ですな、衛門殿」

「ふふふ、見張りだと言っておいて、お主も悪よのう」

「いえいえ、お代官様ほどでは・・・」

「二人とも、なにをしておる?」

「こういうときのお約束だ。いいか、このことは上役には内緒だぞ」

「わかっておりますとも。口がさけても言いはしません」

「ところで、裏葉はまだなおらないのか?」

「それが、あそこに立ったまま動かんのだ」

 

 

「ふ〜む・・・・・・」

(もしこのままなおらなかったら・・・)

『うわ、裏葉の熱で氷室の雪が溶けている!』

『なんだと、ええい、貴様らなどこの場で処刑してくれる!』

『い、いつの間に上役殿が!?』

『わ、私は衛門殿に脅されて・・・・・・』

『あ、てめぇ裏切ったな!』

『なんのことでございましょう?』

『そうでございますね、神奈さま』

『覚悟!!』

 

 

 

「てめぇ、裏切ったな!」

「え、衛門殿、なにをおっしゃるのですか!」

「問答無用!」

「あらあらまあまあ、柳也さま、なにがあったのでしょうか」

「裏葉の熱でここの雪が溶けて、こいつが裏切って・・・」

「わたくしですか?」

「そう、裏葉が・・・って裏葉!?」

「なんでございましょうか?」

「おまえなおったのか?」

「なおったと言われましても、わたくしは・・・」

「覚えてないのか」

「なにをでしょうか?」

「まあなおったからいいか。神奈は?」

「ふぇ?ひょんひゃひゃ、ひゅうひゃふぉふぉ?」

「あ〜!たくわえの雪を!!」

「神奈!雪食うなって言っただろ!」

「ふぁあふぁあ、ひゃおっひゃひゃひゃひょいふぇわふぁいふぁ」

「なにいってるか全然わからんわ!!!」

 

 

「あの柳也さま、一体なにがあったのでしょうか?」

「知らなくていい。説明がめんどうだからな」

「しかし衛門殿、まだ夏はこれからが本番ですぞ。今日のような暑さでまいっていては、また同じことになるのではないでしょうか?」

「そしたら、またおまえも一緒に氷室に入るまでだ」

「それはうれしいことですが、毎日入られると夏のおわりまでに氷室の雪が無くなってしまいます」

「それもそうだ。じゃあ神奈は次からは来るな」

「なに!?柳也どの、それはあんまりであるぞ」

「言いつけを守らんおまえが悪い」

「む〜〜〜〜」

「とにかく、俺ももう夜番だし、もどるか。ご苦労だったな」

「いえ、なんのことはございません。幸い、食べられた雪も少々でしたし」

「いや、だいぶ食ったぞ、こいつ・・・」

「よくわかりませんが、ご迷惑をおかけいたしました」

「体調管理にはお気をつけて」

 

 

 

 

 

 

 

「柳也さま、大変でございます!!」

「俺はまだ夜番の最中なんだが・・・」

「神奈さまが苦しんでおられます故、どうかお部屋のほうまで」

「神奈が?」

 

 

 

 

「おい神奈、なにがあった?」

「りゅ、柳也どの・・・・・・実は腹の調子が・・・・・痛っ」

「雪の食いすぎで腹こわしたんだろ・・・バカかこいつは」

「そうでございますね、柳也さま」





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